ICT導入支援事業とは?
団塊の世代の高齢化により、2030年には高齢化率が30%を超えると言われている日本。
介護人材の不足を防ぐためには、ICT機器の導入によって介護業務の効率化を図ることが急務です。
貴重な介護人材の定着を促すとともに、介護職員の負担を軽減するべく、政府は補助金を通して介護現場のICT化を支援しています。
このような背景から誕生したICT導入支援事業とは、いったいどのような制度なのでしょうか。
ICTとは
ICTとは「Information and CommunicationTechnology」の略で、直訳すると「情報通信技術を活用したコミュニケーション」という意味になります。ITよりも国際的に広く用いられている言葉で、アプリやタブレット端末など、情報伝達を目的としている機器のことを称します。
これまで介護の現場では、その仕事の性質上、ほとんどのやり取りを直接対話や書面を通じて行ってきました。
しかしICT機器を導入し、やり取りの一部をインターネット通信に置き換えることによって、煩雑な仕事を円滑にしたり、ペーパーレス化を図ったりすることができるようになります。
ICT導入支援事業とは
ICT導入支援事業とは、ICT機器の導入を通じて介護事業所の業務効率化を図るとともに、介護職員の負担軽減を実現することを目的とした補助金制度です。
介護保険法に基づくすべてのサービス、すべての介護事業所が対象となっており、既定の要件をクリアすることで指定の金額を受け取ることができます。
IT導入補助金との違い
ICT導入支援事業と同様、ICT機器の導入経費の支援を受けられる「IT導入補助金」という制度もあります。
>>IT導入補助金とは
IT導入補助金は経済産業省の監督のもと、一般社団法人 サービスデザイン推進協議会が運用しています。
いっぽう今回ご紹介するICT導入支援事業は、厚生労働省が国の予算(地域医療介護総合確保基金の介護従事者確保分)を使って行う支援事業である、という点が主な違いとなっています。
ICT導入支援事業の要件について
それでは、具体的にどのようなICT機器が支援対象となるのでしょうか。
ICT導入支援事業の要件は、都道府県によって異なります。ここでは厚生労働省が発表した資料をもとに、ICT導入支援事業の要件について見ていきましょう。
- ICT導入支援事業の要件(一例)
- 記録・情報共有・請求の各業務が一気通貫になること
- ケアマネ事業所とのデータ連携に標準仕様の活用に準ずること
- CHASEによる情報収集に対応していること
- 導入事業所による他事業者からの照会に対応していること
- 事業所による導入効果報告に応じること 等
参考)ICT導入支援事業 【地域医療介護総合確保基金(介護従事者確保分)】
一気通貫・標準仕様の活用とは?
一気通貫のシステムとは、タブレットなどのICT機器を導入することにより、介護記録の作成と職員の情報共有、請求業務までを一括管理できるようにするシステムのことです。
タブレットなどを介して各訪問介護員がデータ入力を行うと、入力情報が大元の介護ソフトに共有され、のちに責任者が行う請求業務や書類作成の手間を省くことができます。
例えば、訪問介護事業所で介護ソフトを導入し、業務をICT化した場合を例にとって考えてみましょう。
これまで多くの訪問介護員は、紙媒体の記録用紙を使用していました。そのためサービス提供責任者はレセプト用の書類を作成する際、ヘルパーの記録内容を目視でパソコンに転記しなければなりませんでした。このような二重記録の作業は効率が悪く、スタッフの業務負担やミスの誘発にも繋がります。
いっぽう、介護事業所に記録用の介護ソフトを導入した場合は、訪問ヘルパーが専用の端末を使って簡単に介護記録をつけられるようになります。また、記録されたデータは自動的に介護ソフト内へ集約されるので、サービス提供責任者は記録内容を転記する必要がありません。
さらに、居宅介護支援事業所とサービス提供事業所間においても、ケアプランのデータを連携する取り組みが活発化してきました。このような仕組みを標準仕様と呼びます。
平成30年度の厚生労働省委託事業において、項目やフォーマットの標準的な仕様が定められました。こうした標準仕様を搭載した介護ソフトであれば、異なるソフト間でもデータ連携や転送が容易になるため、国は積極的に支援を行いたい考えです。
その他にも、導入したソフトを通じて「CHESE(介護のデータベース)」に情報提供を行うことや、システム導入後に導入実績報告書を用いて、効果測定を記録し自治体へ提出することなどが要件として定められています。
「CHASE」とは
介護現場から収集した利用者情報を集約するため、国が管理しているデータベースのひとつです。
介護の現場で発生したさまざまな事例を蓄積・分析し、その結果を介護現場にフィードバックすることによって、より利用者一人ひとりに合った介護サービスを提供していくことが期待されています。「CHASE」は、今年の介護報酬改定で定められた「科学的介護」の実現のために欠かせない存在です。
ICT導入支援事業の補助上限額
ICT導入支援事業によって補助される金額の限度額は、事業所で働く職員の人数に応じて設定されています。
- 1~2人:100万円
- 11~20人:160万円
- 21~30人:200万円
- 31人~:260万円
(補助率は各都道府県が設定)
ICT導入支援事業の補助対象
では、実際にICT導入支援事業を利用する場合、どのような機器が補助対象となるのでしょうか。
対象となるICT機器と、その使用方法の一例をご紹介します。
介護ソフトには記録機能や帳票の作成、シフト管理など様々な機能が備わっています。主に、DVDをインストールして使うパッケージ型のソフトと、パスワードを入力して使うクラウド型(ASP型)のソフトに分かれており、どちらもICT導入支援事業の対象となっています。
>>介護ソフトとは?
こちらは介護ソフトと組み合わせて使用する場合が多いでしょう。介護職員ひとりひとりへ配布することによって、利用者の自宅やリハビリ施設など、遠隔からでも利用者の状況を記録し、データを転送・集約できるようになります。
主にスタッフ間の通話手段として利用します。1階と2階、または別棟のユニットへの緊急連絡時などに使用し、事業所内のコミュニケーションを活発化します。
インターネットを通じて国保連伝送を行う場合、Wi-Fi機器の設置が必要不可欠です。ICT導入支援事業は、こうしたネットワーク環境の整備費にも利用できるようになっています。
介護事業者向けのソフトに限らず、勤怠管理、シフト管理などができるソフトも支援の対象に加わりました。新型コロナウィルス感染症の流行にともない、リモートワークを検討している事業所におすすめです。
ICT導入支援事業を利用するには
ICT導入支援金を受け取る方法は、各都道府県によって異なりますが、およそ以下のような手順になっている場合がほとんどです。
まずは補助金交付申請書、事業計画書などといった書類の他に、導入するICTのカタログや見積書の写しなどを提出して申請を行います。
これらの必要書類は、自治体のホームページからダウンロードするなどして入手できます。
申請内容が承認された後は、実際にICT機器やソフトウェアの導入をスタートします。このとき、補助金実績報告書やICT使用状況報告書、実際に導入した機器の写真などを提出することで、自治体に導入後の状況を報告する必要があります。
報告書に基づき、自治体によって補助金の交付額が確定したら、補助金交付請求書を作成して補助金の請求作業を行います。
補助金の交付を受け取った後は、導入実績報告書を作成し、改めて実績を報告します。
このデータは各自治体で取りまとめられ、厚生労働省へ提出されることになります。
補助金を利用したICT導入までのイメージはつかめましたでしょうか?
ICT導入支援事業の支援対象や金額は、毎年見直しが行われているため、来年には補助金の限度額が変わってしまう可能性もあります。
今のうちにICT化を検討したい場合は、厚生労働省が発表している「ICT導入の手引き」などを活用しながら、事業所内の業務フローの見直しを行い、どのような介護ソフトが必要なのか検討してみるとスムーズでしょう。
どんな介護ソフトがあるのか、予算感などが知りたいと思った人は、まずは介護ソフトナビで気になる資料を請求して、ソフトの概要や金額の目安を確認してみてくださいね。
介護ソフトを知る
- ICT導入支援事業とは?
介護ソフトナビ掲載ソフト一覧
